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被爆70年に寄せて
核なき世界への礎

—広島の「誓い」こそが力—

2015年7月3日付 中国新聞

「誓い」は「力」である。
どれほど現実の壁が厚くとも、人間はそれを乗り越え、未来を開くことができる。その源泉となるものこそ、歴史の教訓を胸に、同じ悲劇を二度と誰にも味わわせてはならないとする「誓い」ではなかろうか。
広島に脈打つ「誓い」。それは、核なき世界への礎であり、人類を結び、平和を創る、最もかけがえのない力である。

4月から5月にかけ、ニューヨークの国連本部で行われた核拡散防止条約(NPT)再検討会議は、最終合意が得られぬまま閉幕した。前回(2010年)の会議以降、核兵器の非人道性をめぐる議論が高まり、廃絶に向けた具体策の検討も呼び掛けられていただけに、意見の溝が埋まらず、問題が先送りされたことは誠に残念でならない。
だが、決して希望が失われたわけではない。
「不可抗力と見えたものが、人間の積極的な決断から発した人間の行為によって逆転した例は珍しくない」。これは、戦後、広島での取材を原点に核廃絶を訴え続けたジャーナリスト、ノーマン・カズンズ氏の言葉だ。
原爆孤児への支援や、被爆した少女の渡米治療に奔走された氏は、後年、特別名誉市民として広島の一員に連なったことをこの上ない誇りとされた。
逝去の直前、私との対談の中で、人間の尊厳とは互いの生命を大切にする「連帯」の謂にほかならないと強調されていたことが忘れられない。
この「連帯」の拡大を展望する上で注目すべき動きが、今回の再検討会議でも見られた。
「核軍縮は国際法上の義務にとどまらず、道徳的かつ倫理的に欠くべからざるもの」と訴えた南アフリカ共和国をはじめ、各国の代表が核兵器の非人道性をめぐって相次ぎ発言に立った。最終日には、核兵器を忌むべきものとして禁止し廃絶する努力を誓う「人道の誓約」への賛同が、107ヵ国にまで広がったのだ。
会議自体は決裂に終わったものの、NPT加盟国の半数以上が、核問題の解決を自らの「誓い」と位置付けた意義は大きい。
今後の焦点は、その「連帯」の裾野をさらに広げながら、核問題の膠着状況を打ち破るための“橋頭堡”をつくり出すことにある。

核兵器の非人道性は、圧倒的な破壊力や救援の困難性だけにあるのではない。
そのことを浮き彫りにしたのが、再検討会議で上映された映像だった。原爆投下前に広島の爆心地周辺で暮らしていた人たちの営みを復元したものだ。原爆ドームの東隣にあった家で育ち、原爆によって両親と弟を亡くした、映像作家の田辺雅章氏が制作された作品である。
「当時広島で暮らしていた人たちの『顔』を想像してほしかった」と田辺氏が語るように、一人一人の身に何が起きたのか、その真実にこそ目を向ける必要がある。
どれだけ懸命に生きようと、生活の営みを積み重ねようと、一瞬で全ての意味を奪い去ってしまう。この理不尽さに、核兵器の非人道性の核心部分があると思えてならない。

原爆の惨禍を目の当たりにした世代が少なくなる中、広島では、被爆者の記憶に残る光景を高校生が絵画にする「次世代と描く原爆の絵」の活動をはじめ、重要な取り組みが広がっている。今年の4月には、被爆者から受け継いだ体験を自分の言葉で語る「被爆体験伝承者」の講話会もスタートした。
ともすれば風化しかねない被爆体験を、わが身に置き換えて追体験し、今度は自分が“伝える使命”を担っていく。こうした誓いの継承こそ、「人類と核兵器は共存できない」との広島の心を時代精神に高めゆく、確固たる基盤となるものだ。
再検討会議の期間中も、広島の若人たちがニューヨークで意欲的な活動を行ったことを、中国新聞の記事で知った。
なかでも印象深かったのは、中国新聞のジュニアライターとして取材に臨んだ、2人の高校生による特集記事である。そこには時折感じてきたという、「私たち一般市民が訴えたところで世界は動くのか」との不安も率直につづられていた。
しかし、それも次第に晴れていったという。非政府組織(NGO)への取材や現地の学生との交流を通じて、確信と勇気が湧いてきた、と。
「個人レベルでは誰にとっても核兵器は不必要なはずです。未来は私たち若者がつくります」との決意が、紙面で輝いていた。

原爆投下から70年を迎える8月には、広島で包括的核実験禁止条約(CTBT)の賢人会議と国連軍縮会議が行われる。
安全保障は国家の専権事項とされ、なかでも核政策は最も動かし難い壁となってきた。
しかし、世界の民衆の立場から見れば、核兵器は「誰にとっても不必要な存在」であるばかりか、「どの国の人々に対しても絶対に使用されてはならない兵器」そのものである。
今こそ、非人道性への懸念の高まりを突破口に、新しい流れを断固として生み出すべき時だ。その最大の原動力となるのが、各国と市民社会の間で広がる“核なき世界”への誓いである。
私どもも、他のNGOと協力して「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を8月に広島で行い、核兵器の禁止を断固として求めていく決意である。
かつてカズンズ氏が限りない期待を寄せておられたように、広島の天地には「人間の運命への強い確信」が脈打っている。広島の70年の限りなき命の輝きこそ、「人間の運命に希望あり」と確信すべき、最大の証左ではないだろうか。
今再び広島から、「人間の運命への強い確信」に立って、原爆投下70年という節目を、核時代に終止符を打つために世界が大きく踏み出す、歴史の転換点にしなければならない。
21世紀の人類の未来は、この誓いの挑戦にかかっている。