HIROSHIMA SOKAヒロシマSOKA

ホームヒロシマSOKA池田SGI会長の言葉NPDI外相会合に寄せて 不可能を可能にする「広島の力」

NPDI外相会合に寄せて
不可能を可能にする「広島の力」

—被爆者の願い議論の軸に—

2014年4月2日付 中国新聞

人間は、不可能を可能にする。
絶対にできないと思われた難事も、決然たる信念で結ばれた行動の連帯があれば成し遂げることができる-人類の歴史は、そのことを証明してきた。
奴隷制度の廃止しかり、生物兵器と化学兵器の禁止しかり、アパルトヘイトの撤廃しかり。
21世紀に生きる私たちも、必ず新たな足跡を人類史に刻むことができるはずだ。
現実の分厚い壁を打ち破り、核時代に終止符を打つことは、断じて不可能ではない。

2月、希望の曙光がメキシコで立ちのぼった。146カ国の代表が出席した「核兵器の非人道性」に関する国際会議で、“人間の尊厳に反する核兵器を禁じる法的枠組みが必要である”と表明されたのだ。
議長総括では、「この目標に資する外交プロセスを立ち上げる時が到来した」と強調し、年内にオーストリアで行われる次回の会議で更に弾みをつけていくことも、呼び掛けられた。国連加盟国の「4分の3」に当たる国々が非核の世界を求める意思を共有し、具体的な行動への足がかりを築くことができた。
この動きを後押ししたのが、広島と長崎の被爆者の方々の魂の叫びに他ならなかった。議長国の強い要望で、被爆体験が語られる場が設けられたのである。
一発の原子爆弾がどれほど残酷な被害をもたらしたか。巨大なキノコ雲の映像などは胸に留めていても、その雲の下で実際に起きた惨劇について、直接、被爆の体験を聞いた人は、国内でも世界でも、まだまだ少ない。
広島からの登壇者の方は、多くの被爆者が白血病などで長く苦しんできたことを証言し、「こうした兵器が非人道的でなくて何なのか」と切々と訴えられた。原爆の災禍は、今もなお、被爆者や家族の方々を苦しめ続けているのだ。この被爆者の声が、多くの出席者の心を揺さぶり、会議の議論の方向性に大きく影響を与えた。これが、参加した私の友人の偽らざる実感である。

折しも今月には、広島で「軍縮・不拡散イニシアチブ(NPDI)」の第8回外相会合が行われる。
このイニシアチブは、日本とオーストラリアが主導する形で4年前に立ち上げられた。以来、核兵器を保有する国と非保有国の“橋渡し”の役割を担い、具体的な提案を行うことが目指されてきた。
メキシコの会議には、アメリカやロシアなど核保有5カ国が参加しなかった。しかし、来年の核拡散防止条約再検討会議に向けて、保有国の核軍縮義務の履行が焦点である。
NPDIは、アジア、ヨーロッパ、北米、中南米、オセアニア、中東、アフリカと、世界を横断する12カ国で構成されている。その特性を生かして、保有国と非保有国の間を「誰も核兵器がもたらす壊滅的な人道的結果を望んでいない」との共通認識でつないでいくことが、今ほど求められている時はない。

オバマ米大統領が昨年、「核兵器が存在する限り我々は真に安全ではない」と演説したように、核兵器の脅威の認識は、保有国も非保有国も一致している。
その認識をもってしてもなお、安全保障上の理由から核兵器を保持し続けようとする状態を、いかにして打開するか。
広島と長崎の方々が、一貫して叫び続けてきた「核兵器という絶対悪がもたらす悲劇を二度と誰にも味わわせてはならない」との熱願を、議論の中軸に据える以外にないと私は思う。
その意味からも、広島でのNPDI外相会合の意義は大きい。
前回の会合でも、複数の出席者から「核兵器の人道的影響」についての議論を進める意欲が示されていた。今回の広島での会合では、被爆者と各国外相との意見交換の場も設けられる予定だ。人道的影響をめぐる議論を重点的に行い、「核兵器のない世界」への動きを前に進める成果を導き出すことを期待したい。
長らく“核の傘”に依存しながらも、昨年10月の「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に賛同し、新たな一歩を踏み出した日本が議論をリードしていくことを、強く望むものである。

広島市内の平和大通りには、自らも被爆しながら救護活動にあたった医師・永井隆博士が生前、平和への願いを込めて寄贈したバラが植えられている。今も、有志による尊い保存の活動が行われていると、先日、中国新聞の記事で知り、感銘した。
思いは受け継がれてこそ、時代を変える力となる。
先般のメキシコの会議では、被爆3世の「高校生平和大使」のすがすがしい発言が皆の胸を打った。祖父母の写真が映し出される中、「被爆者の言葉の重み、平和への願いを受け取り、核兵器の非人道性を世界に訴える」と毅然と宣言したのである。
私の見守る青年たちも、今、日本各地で被爆体験を学ぶ集会を行っている。幼少期に被爆された方々の「罪のない子どもたちを絶対に犠牲にしてはいけない」と語りかける真情が、深い感動と決意を広げているのだ。
「核兵器のない世界」を求める声は、世界の青年の間でも高まっている。
私たちがアメリカやイギリスなど9カ国の青年層を対象に実施した意識調査では、9割以上が核兵器を非人道的と考え、8割が禁止条約の制定を指示していることが明らかになった。
こうした若い世代の声を結集すべく、私たちは、保有国を含む世界の青年たちが参加する「核廃絶サミット」を、原爆投下から70年の明年、広島と長崎で開催するように呼び掛けている。
核時代を終わらせるためには、核兵器に安全保障を依存する国々に政策転換を迫る市民社会の粘り強い連帯が欠かせない。その主役こそ青年である。
被爆体験を聞いた広島の一人の若人は語っていた。
「自分ができることから行動していきたい。それが広島市民としての使命だからです」と。
今年から来年にかけて、不可能を可能にする挑戦が力強く前進することを願ってやまない。